先日、眼科の処方箋をお持ちのお客様から、「遠視」と「強い乱視」をあわせ持つ度数のメガネをご依頼いただきました。乱視の度数は−8.00。メガネ店を長く続けていても、めったにお目にかからない数値です。
強い乱視をお持ちの方の中には、メガネ作りで苦労されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は実際に作製したレンズの写真とあわせて、強度乱視のメガネ作りについてご紹介します。
今回の処方は、左右とも「遠視+5.25、乱視−8.00」という度数でした。
| S(球面度数) | C(乱視度数) | AX(乱視の軸) | |
|---|---|---|---|
| 右眼 | +5.25 | −8.00 | 160° |
| 左眼 | +5.25 | −8.00 | 160° |
Sの「+」は遠視を、Cは乱視の強さを表します。乱視がある方の多くは−2.00以内に収まるため、−8.00はかなりの強度です。
この度数を方向ごとに分けると、160°方向は+5.25(遠視)、それと直角の70°方向は−2.75(近視)になります。ひとつの目の中で、方向によって遠視と近視が混ざっている状態で、専門的には「混合乱視」と呼ばれます。メガネがないと、縦線と横線でぼやけ方が大きく違う見え方になります。
レンズはHOYAの「セルックス903」、屈折率1.67の薄型プラスチックレンズを使いました。乱視−8.00は在庫レンズの範囲を大きく超えるため、度数に合わせてメーカーで製作するオーダーレンズです。その分、お渡しまで通常のメガネより日数をいただく場合があります。

左右のレンズ袋です。度数欄に「+5.25 −8.00 160」と印字されています。

レンズを真横から見ると、場所によってフチの厚みが大きく違うのがわかります。

加工前のレンズ(直径70mm)です。左側のフチは厚く、右側は薄くなっています。
乱視レンズは方向によって度数が違うため、「+」の方向はフチが薄く、「−」の方向はフチが厚くなります。この丸いレンズをフレームの形に削ると、厚い部分の多くは削り落とされます。だからこそ、フレームの大きさや形が仕上がりの厚みを左右します。
強い乱視のメガネは、レンズを発注するだけでは完成しません。わずかなズレが見え方に大きく響くため、加工とフィッティングの精度が仕上がりを決めます。
1. 乱視の軸を正確に合わせる
乱視レンズは、処方された角度(今回は160°)どおりに枠に入っていて初めて効果を発揮します。乱視−8.00では、軸が3°ずれるだけで約0.84、5°ずれると約1.39の乱視が新たに残ってしまいます。一般的な乱視−1.00なら3°ずれても約0.10ですから、同じズレでも影響は約8倍です。
もちろん、通常の乱視のメガネでも5°もズレる事はありません。というか5°もずれたら作り直しです
2. 目の中心とレンズの中心を合わせる
度数が強いほど、レンズの中心が目の位置からずれたときの影響(プリズム作用)が大きくなります。瞳孔間距離や目の高さを測り、その位置に合わせてレンズを加工します。
3. かけ位置を整える
目からレンズまでの距離やレンズの傾きでも、強い度数ほど見え方が変わります。また、メガネが顔の上で傾くと乱視の軸も一緒にずれてしまうため、フィッティングで正しい位置に合わせます。
4. フレーム選び
写真のとおり、強度乱視のレンズは場所によって厚みが大きく変わります。顔の幅に合った小ぶりなフレームを選ぶと、厚み・重さ・周辺のゆがみを抑えやすくなります。
5. 慣れるまでのサポート
強い乱視を矯正すると、かけ始めに床が傾いて見えたり、物の形がゆがんで感じたりすることがあります。お渡し後もかけ心地をお聞きし、必要に応じて調整や眼科へのご相談をご案内します。
太陽めがねには、眼鏡作製技能士 1級プライム会員が在籍しています。眼鏡作製技能士は、令和4年度に始まった厚生労働省所管の国家検定で、視力の測定、レンズ加工、フレームのフィッティングなどの技能を問うものです。
今回のような強い度数では、処方箋の読み取り、レンズの仕様確認、軸合わせ、フィッティングのどこか一か所でも誤差が出れば、見え方に直結します。国家検定で問われる知識と技能は、まさにこうした場面で生きてきます。1975年の創業から地域のみなさまのメガネを作り続けてきた経験とあわせて、一本一本丁寧に仕上げています。
強い乱視でも、レンズメーカーの製作範囲内であれば、眼科の処方箋どおりのメガネをお作りできます。「この度数でメガネは作れるのかな」と思ったら、まずはお気軽にご相談ください。
眼科の先生・スタッフのみなさまにも、このような度数でもメガネの作製が可能だと知っていただければ幸いです。処方箋をお預かりした際は、レンズの製作可否や納期を確認したうえでご案内いたします。
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